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SCJ Conference 2018 開催レポート~B会場~「プロ指導者と地域密着型NPO指導者が語る スポーツコーチング」~子どもたちとの関わりの「期間」と「密度」に焦点をあてて~

短期間でたしかな成果を出す荒川氏と、長期間の関わりの中で可能性を引き出していく石尾氏。スタイルの異なるお二人の視点から、スポーツコーチングについての議論が行われました。

プロフィール

荒川 優 氏

(株式会社スポーツクラウド代表取締役社長)

元100m選手。 引退後は一橋大学大学院で経営を学び、日本では数少ないスポーツ選手のMBAホルダーとなる。スポーツ×経営によって、スポーツクラウドの代表取締役社長となりFacebookのファンは42,000人超。 現在はプロ走コーチとして、日本全国で活躍。国内外の科学的な知見や経験をもとに生み出されるオリジナルの”速くなるコツ”が話題となり、指導した生徒数は30,000人以上。「日本で最も多くの足を速くしたコーチ」としても有名。オリンピック選手をはじめとしたトップ選手や、Jリーグ・プロ野球選手・ラグビー日本代表など競技を越えて数多くのアスリートを指導している。2017年からは全国の小学校を回る『スクールキャラバン』の走指導代表コーチに任命されている。

石尾 潤 氏

(NPO法人スポーツカントリーアンビスタ 代表理事)

幼い頃からサッカーに親しみプロを目指すも、早稲田大学教育学部に進学と同時に指導者に転向。卒業後は学校法人に就職し私立大学の教員兼職員を3年間歴任。平行してボランティアでサッカーコーチをする中、地域女子サッカーの現状を知り、2016年4月に少年少女のサッカークラブ運営を主な事業とするNPO法人スポーツカントリーアンビスタを設立し、代表理事に就任。 現在はスポーツ指導の現場に加えて、パラレルワーカーとして以下の名刺を持って活動している。 ①NPO法人スポーツカントリーアンビスタ 代表理事 ②FC HERMANA U-15ジュニアユース 監督(少女サッカー) ③FC LIGARスクールコース スクールマスター(少年サッカー) ④Academia Ambista 代表(文武両道支援特化型アカデミー) ⑤ライフイズテック株式会社 採用担当(中高生向けプログラミング教育) ⑥JTB株式会社 公認ファシリテーター(中高生向けキャリア教育) ⑦株式会社リーフェ 営業マネージャー(医師が運営する健康情報ポータルサイト)

――指導者として大事にしていること

荒川: 私はチームに属して指導するわけではありません。人によっては月に1回、1時間の指導で結果を求められます。その中で、「これをやってね」と教えるだけでは結果は出ない。圧倒的に時間が少なく、付け焼刃のようなことしかできないからです。そうした中、私は「モチベーション管理」に熱を入れています。例えば、毎日直接声をかけたり、LINEでメッセージを送ったり、といったことです(笑)

1回のイベントで完結するような時は、まず「速くなった」という経験をしてもらうことを大切にしています。

イベント中に必ず1人1人に声を掛けています。例えば、「今の走り良かったね!」と褒める。そうすることで、普段あまり走りで褒められることがない子に周りが注目してくれる。ちょっとしたヒーロー感を味わうことができるんです。それがイベント後のモチベーションにも繋がってくれています。

私は小学生の時サッカーをやっていたのですが、プレーが好きだったわけではなく、周りの友達がやっているから、とか、親にやれと言われたからやっているという感じでした。ではなぜ続けたのかというと、時々あったヒーロー体験があったからかなと思っています。褒められて嫌な人はいないじゃないですか。だからその選手が全体の前で褒められる機会を意図的に作ってあげることを大切にしていますね。

それ以外では、陸上は数字が全てなので、数字が伸びればその選手の成長実感になります。1日の指導の間で必ず「before→after」を作り、数字で成長を実感できるようにしています。

石尾: 私は「ストーリーで語る」ことが全てだと考えています。私もかつては若気の至りで、目の前のミスが許せず「なんで出来ないんだよ!」という気持ちになることが続いていました。でもそれでは選手が成長しないと気付いた。

そこでどうしたらいいかと考えた時に、「物語を作る」ことが大事だなと気づいたのです。

今起きているミスが過去の自分のどんなプレーの延長線上にあるのか、今のこのトレーニングが試合のどういう場面で活きるか、このことについていかにシンプルに子どもたちに伝えられるか、これらすべてを理解して納得してくれた状態で練習することがすごく大切だと感じています。

チームのストーリーを作るのに比べると個人個人のストーリーを作るのは難しいのですが、一番大切なのは「タイミング」だと思っています。タイミングによって、同じ言葉を掛けても選手の中に入っていく時と入っていかない時があります。そういう意味では、指導者は「脚本家」になるイメージです。

――仕事としてのスポーツ

荒川: プライベートコーチというのは特殊で前例もあまりないので、何が正解なのか分からないですが、「安くしないと人が来ない」という状態になると、市場が先細りしてしまうと考えています。

そこで私はあえて価格をやや高めにしています。「価格は高いけどたくさん人が集まる」という成功モデルを作ることが、市場を拡大させていくことに繋がるのではないかと思っています。

石尾: 私は荒川さんに比べるとかなり安い価格でやっていますね(笑)それでも人数が250人来てくれているので、収支としては成り立っています。とはいえ、NPOとしてスタッフ全員に給与を支払いながら事業を回していくのは難しいというのが正直なところです。

私自身はスポーツを教えることは1つのライフワークという位置づけにしています。そして、スポーツコーチングでの実績を活かして他の仕事も取っていくという方向性で考えています。

平日の日中には他の3つの会社の名刺を持っていて、リモートでお仕事をさせて頂いています。そして、NPOの活動からはお金をもらわなくても自分は生活ができるという状態を作って、スポーツを仕事にしています。もちろん、ゆくゆくはスポーツそのものからお金を稼ぐことができれば理想ですね。

――指導者としての学びの機会作り

石尾: 私は尊敬する先輩指導者の指導現場を直接見に行くことで学びを得るようにしています。ライセンスを取ることや、本を読んだりDVDを観たり、ということも手段としてはありますが、自分の目で生きた指導を見に行き、自分の指導に活かせそうなものを持ち帰ることが大切なのではないかと思っています。

世の中サッカーを教えることがうまいコーチはたくさんいると思います。その中で自分がサッカーの指導だけで尖りきっていけるかというとそうではない。

それ以上に、サッカーという壁を壊して自分自身が人間として成長していくことが大切だと思っています。つまり、教育に対する価値観をしっかりと持つことや、他の仕事、例えば人事や営業を経験することで社会人として成長していくこと。これに対する好奇心は変わらず持ち続けたいと思っています。

荒川: 私は現場に勝る経験はないと思っています。それと「同じ練習を1か月以上やらない」というルールを決めています。そうすると、次何をやるかを自分で考えなければならない。その繰り返しの中で、新しい知識を構築しています。

講演を終えて

石尾さんは3年間という長いスパン、荒川さんは最短で1日で完結するという、指導のスパンという観点では正反対のお二人。指導をする上で大切にしていることや、指導者としての学び、における異なる点や共通点が、リアルなメッセージから感じ取ることが出来る、気づきの多いセッションとなりました。